Implant
インプラント
インプラントについて
インプラントの語源
歯を抜いた際に、その失った部分を補うための治療法の一つです。
最近「インプラント」という言葉はよく耳にするけれど、詳しいことはわからない、という方も多いのではないでしょうか?痛いのではないか、怖いのではないか・・・などの不安もあることと思います。
そもそも「インプラント」とは、何かを「埋める」ことを意味する言葉で、医学の世界では整形外科の人工関節などを骨に埋め込む治療で多くの実績があります。
歴史的に人間は、失った自分の体の一部を何かで補うことを考え続けてきました。古い時代から既に貝殻や、動物の歯や骨を「インプラント」して歯の代わりをつくっていた事実が報告されています。
インプラントの素材
1931年、ホンジュラスで発見された歯の形の貝殻が埋められた人の下顎。紀元600年頃のもの。
以降最近まで、金、サファイア、鉄、ステンレス、アルミニウムなど様々な材料が研究されましたが、いずれも良好な結果は得られませんでした。
ところが、1965年、スウェーデンの学者、ブローネマルク博士が実験中チタンの板に骨が結合する現象を発見し、研究を重ねた結果、革新的に安全なインプラント治療が発達し、現在のインプラント治療が確立したのです。
インプラントを推薦する理由
現在、インプラント治療ではまず、100%に近い純チタンでできた人工歯根(インプラント体)を歯のなくなった部分の骨に埋め込み、抜いてしまった 歯の根の代わりを作ります。その上に差し歯の要領で歯を作ってゆきます。もう一度ご自分の歯を作るようなものですから、咬み心地はほぼご自分の歯と同じです。
人間の歯には、毎日とても大きな力が加えられています。お食事のとき、運動をするときなど、日常生活の中で歯は身体を安定させ、維持するためにたくさんの役割を果たしているのです。
何らかの原因で歯を抜くことになってしまった場合、インプラント治療が確立する最近まで、それらの大きな力を支える代替は、残っている他の歯に頼るしか方法がありませんでした。
しかし、それだけの力を他の歯で補うのは、リスクも多く、最終的にはその他の歯も失うという結果になってしまった、という経験を持っている方も多くいることでしょう。
インプラント治療は、歯を失った部分のみを治療する方法ですから他の歯に侵襲を加えることはありません。そして、しっかりと固定された、硬いものも咬むことのできる歯を回復することができるのがインプラント治療です。
ただ、普通の歯科治療と異なり、人工の根(インプラント体)をあごの骨に埋め込むことが必要となりますので、きちんとした知識と技術を持った信頼のできる、設備もしっかりとした歯科医院で行うことをお勧めします。
インプラントの良さ・魅力
日常生活でのメリット
自分の歯と同じように食べることができる
インプラントは入れ歯と違い、骨にしっかりと固定されていますので、力をかけて硬い食べ物もしっかりと咬むことができます。噛みしめることで出てくるお食事の美味しい味を損なうことはありません。
また、お食事のときに食べ物が入れ歯の下に入り込んで痛い、嫌なにおいがする、などの悩みもありません。
歯を気にすることなく人前でも笑ったり、話したりすることができる
入れ歯のように、他の歯にかけた金属が見えることもありませんし、取り外して清掃する必要もありません。
お食事中、おしゃべりを楽しんでいる最中にも、外れることや、歯が見えることを気にする必要がなくなり、思い切り楽しむことができます。
歯の健康についてのメリット
歯を失った部分のみを治療でき、他の歯に負担をかけない
失った歯の両側を削るブリッジ治療
これまで失った歯を補うためには、周囲の歯がその負担を担う方法しかありませんでした。
基本的にインプラントは、歯を失った部分のみを治療する方法なので、他の歯を削ったり、過剰な負担をかける必要はありません。
歯を失った部分の骨がやせない
歯を失い、やせてしまった歯ぐき
歯を失った後、歯の根を支えていた骨は力の伝達がなくなるためその役割を失い、ある程度の細さになるまで自然に吸収し、やせていきます。ブリッジにした場合 にもダミーの歯の下の骨はやせていきますので、次第に食べ物が詰まる、舌触りが悪くなるなどの症状が出てくる可能性があります。
インプラントならば、咬む力をしっかりと骨に伝えてくれますので時間が経っても骨はやせません。
インプラント対象者
ほとんどの方が対象者
インプラントは誰もが受けられる可能性があります。
インプラント治療はたとえ年を取っていても、誰でも治療できる可能性があります。
しかし、場合によってはインプラント治療が制限されたり、他の治療を優先させなくてはならないことがあります。
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顎の骨の量が少ない方
インプラント治療は、歯茎の下の顎の骨に直接インプラント体を埋め込む手術を行います。そのため、顎の骨の量が少ない方は、骨移植などの処置を併用しなければならない場合があります。
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妊娠中の方
術後の投薬や、レントゲン撮影を避けたい場合には、出産後の落ち着いた時期にインプラント治療をした方がよいでしょう。
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全身疾患のある方
出血を伴う処置もありますので、糖尿病や高血圧などの慢性疾患がある方は良好な状態にコントロールされていることが条件になります。その他、全身的なご病気がある場合にはかかりつけの医師と相談の上インプラント治療を考える必要があります。
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他の歯に大きな虫歯や根の
病気がある方、歯周病の方他の歯に大きな虫歯や根の病気がある方、歯周病の方
インプラントに適さない症状
1.骨の量
インプラント治療は、まず歯を支える土台を作るところから始まります。
建物で例えれば、柱を立てるところから始まるわけです。柱は土壌のしっかりした場所に立てることが鉄則であり、壊れない建物を建てる基礎となるでしょう。
インプラントも同じです。インプラント体を立てる土壌はつまり、骨。骨のしっかりとある部分に立てるのが最も安全なインプラントです。では、具体的にどのようにして骨の量を検査するのでしょうか。
第一の手掛かりは、歯医者さんで撮影する大きなお口全体が写るレントゲン写真です。
この2次元的なレントゲン写真で、ある程度のおよその骨の量がわかります。
CT画像による検査
上あご奥のCT画像
第二の手掛かりは、CT画像です。骨を縦に輪切りの状態で検査することができるので、骨の幅や、内部の構造まで、詳しくまで診査することができます。第一の手掛かりでは情報が不十分である場合には、CT撮影を行って診査します。
※右のCT画像の中で、矢印で示されている部分がインプラントを埋められる骨の量です。
「私は虫歯が多くて、歯が弱かったから骨も無いと思う」、と考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、実は歯周病の人の方が骨の量は吸収して少なくなっている可能性が高いのです。
万が一、骨が少なくなっていた場合でも、骨の移植や、新しい治療方法など、最新の技術が適応できることが多くあります。歯科医院でしっかりと診査をして、どのようなインプラント治療が適しているかを診断してもらいましょう。
2.歯周病
インプラントは骨に支えられるため、骨が吸収する病気である歯周病は大敵です。もちろん、虫歯になる心配はありませんが、周囲に歯周病の歯が処置されないままになっていたり、インプラントの周囲に汚れが溜まればインプラント周囲炎という病気になり、インプラント治療は失敗してしまいます。
ですから、インプラント治療を受ける際には、歯科医院で歯周病のチェックや治療を受け、日頃からきちんとした歯磨きを心がけましょう。
もちろん、残っているご自分の歯を少しでも長く使っていくためにも、日頃の清掃は最重要ポイントです!
3.喫煙
喫煙は歯周病だけでなく、インプラント治療にとっても大敵です。喫煙による血管収縮作用によって、口の中の粘膜内の血流が阻害され、組織全体の免疫力が下がります。
従ってインプラント治療直後の傷の治りが悪かったり、歯周病が治らない、インプラント周囲炎になってしまうなど、インプラント治療の失敗につながる悪影響がたくさんあります。もちろん、残っているご自分の歯を少しでも長く使っていくためにも、タバコを吸われている方はこれを機に、是非とも節煙、禁煙を心がけましょう!
インプラントの流れ
インプラントの基本的な治療の流れ
ここではインプラント治療の基本的な流れを詳しく見ていきます。インプラント治療は一度の手術のみで終わるわけではなく、手術後の治癒期間、仮歯の作成など、いくつかのステップがあります。
しっかりとした手順を踏むことで安全性も高まり、治療後も快適な生活が可能になります。
STEP 1
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インプラントを埋め込む顎の骨の量や質、形を診査するため、お口の中の型を取ります。 レントゲン撮影、また骨の状態によっては、CT撮影を行います。 |
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STEP 2
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麻酔をしてから、骨を削りインプラントを埋め込み、蓋を取り付けて粘膜を閉じます。 1回法の手術の場合は大きめの蓋を取り付け、お口の中にその蓋が見えるようにして手術を終了し、2次手術は行いません。 |
STEP 3
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2回法を選択した場合には、治癒期間終了後粘膜を開けて、大きい蓋に取り替える2次手術を行います。1回法の場合には不要です。 |
STEP 4
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治癒したところで、仮歯を作り、実際に使用していただきながら形態や装着感などを確認します。 かみ合わせや強度に違和感があれば主治医と相談し、本歯の作成に向けてデータを集めていきます。 |
STEP 5
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仮歯の装着で得た情報を基に最終的な本歯用の型を採り、歯並びや色をチェックして作成します。 作成した本歯を装着し、治療が完了します。 |
STEP 6
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治療が終わった後も、定期検査をしながらきちんと管理していきましょう。 |
インプラント症例
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施術前
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施術後
ケース1(50代女性)
歯が破折し、保存ができず抜歯をしてインプラントをした患者様です。
今後のかみ合わせの負担なども考え、しっかり噛めるようにとインプラントをご選択されました。
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施術前
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施術後
ケース2(20代男性)
元々永久歯がなく乳歯が抜けておらず、乳歯が急に脱落した患者様です。
ブリッジ、入れ歯など他の治療法なども踏まえたうえでインプラントをご選択されました。
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施術前
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施術後①
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施術後②
ケース3(60代男性)
歯が破折し、保存ができす抜歯をしてインプラントをした患者様です。
固い食べ物が好きで、しっかり噛めるようになりたいとインプラントをご選択されました。
当院では開院当初より、インプラント専門の先生に治療をお願いしております。
インプラントの術前術後の説明や、インプラントを入れた後のメンテナンスなど、担当医、担当歯科衛生士がしっかりご説明致しますのでご安心ください。
治療後の生活とメンテナンス
インプラント治療後の飲食について
- 麻酔は2~3時間くらいで切れます。お口の中の感覚が戻ってから、飲食して下さい。
- その間は、冷たい飲み物は飲んでも結構ですが、固いものや熱いものは避けてください。
- お口の中を噛んだり、やけどをする危険があります。
- 当日は、アルコール類や刺激物は避けてください。傷はなるべく刺激しない方が好ましいので、食べ物が当たらないように気を付けて、召し上がれる部分では通常のお食事をしていただいて結構です。
インプラント治療後の清掃について
- 食べた後は、うがいをして汚れを溜めないようにしてください。
- 手術した部分については、傷が良くなるまでの手術後約一週間、一日二度はうがい薬でぶくぶくうがい消毒してください。市販のイソジンなどでも効果があります。
- 歯磨きは、手術した部位を避けて、他の部分はきちんと磨き、磨いた後にうがいをしてください。
- 手術した部分を舌や指で触ると不潔になり、痛みや出血、感染を起こすことがありますので注意してください。
インプラント治療後の日常生活について
- 当日は激しい運動や長時間の入浴など、血の巡るような行為は避けてください。出血しやすくなったり、痛むことがあります。
- お薬は指示通りに服用してください。
- 痛みや腫れがあるときは、術後2日間くらいは冷たい氷で冷やしてみてください。(長く冷やしすぎるとしこりとなって残る危険がありますので、注意してください。)
- 翌日からは血が止まり、熱がなければ入浴しても大丈夫ですが、傷が良くなるまでは血の巡ることをすると痛むことがある可能性があります。
- 術後1日くらいは傷口から血がにじむことがあります。血がしっかりと固まり、止まるまではお口を頻繁にゆすぎ過ぎないようにしてください。尚、まれにお口の中の血が固まり、あざのようになることもありますが、次第に消えてゆきます。
- 傷の治りが悪くなりますので、喫煙は極力控えてください。
インプラント手術後の経過について
- 1~2週間経過した後、インプラントした部分の痛みや違和感は消えていくのが普通です。時間が経っても、それらの症状が継続する、あるいは悪化することがあれば担当医にご相談ください。
- まれに、最初の手術でインプラントがしっかりと骨にくっつかない場合もあります。その際にはやり直しなどの処置がありますので、担当医によくご相談ください。
インプラント手術後のメインテナンスの仕方
- 全体的に丁寧に歯ブラシをします。手用・電動ブラシどちらでも構いません。
- 隙間の大きな部分は歯間ブラシや、フロス(糸ようじ)を利用して、細かいところまで磨きます。
- 咬み合わせが変化したり、清掃が行き届いているかをチェックするために、歯科医院で定期的なメンテナンスを行ってください。
インプラントの痛みについて
痛みを感じないインプラントの治療
インプラント治療中に痛みはありません
インプラントを埋め込むときなどには、あらかじめ、しっかりと麻酔を効かせて治療していきますので、痛みを感じることはありません。 治療の後で、多少の痛みがでることもありますが、お薬で抑えられる程度のものです。
清潔な環境が痛みを少なくします
人間の体は、細菌、ウィルスなどの外敵が体内に入り込み、それに対して闘う際には大きな炎症反応が現れ、強い痛みや発熱を伴うようにできています。インプラント治療は、きちんとした清潔な滅菌環境で治療され、体内に入るインプラントも清潔なものですから、それらの痛みの反応が少ないと考えられています。
ただ、患者様によって個人差がありますし、もともとの骨の状況や、行った処置の大きさによって体の反応は異なりますので、投薬等、治療後の管理については主治医の指示に従ってください。